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最近読んだ本(北村薫・池澤夏樹) [日本人作家]

玻璃の天

玻璃の天

  • 作者: 北村 薫
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2007/04
  • メディア: 単行本

またたく間に2週間が過ぎてしまいました(^0^;)
最近すこし横になったら最後、そのまま眠ってしまいます。
どうしてこう毎日眠いのでしょう?自分でもよくわかりません(-_-)zzz
こんな事で夏が乗り切れるのでしょうか、私(7・8月は仕事がとても忙しいのです)。

読んだ本、またまた溜まってますのでさっそくいきますね〜。
今回は、表紙がシックで涼しげなものを2冊です。

1冊目は北村薫の最新刊『玻璃の天』です。


昭和初期、士族階級出身のお嬢様(花村英子)と博識な女性運転手(別宮みつ子:ベッキーさん)が謎を解くミステリ集。
街の灯』の続編にあたります。

このお話はミステリというだけでなく、著者の豊富な読書量と知識から紡ぎ出される文学、古典、美術、音楽、映画、当時の風俗、思想などががそこかしこに散りばめられていて読み応えがあります。

■「幻の橋」
英子は同級生の百合江から恋の悩みを打ち明けられた。相手は百合江の祖父の犬猿の仲の兄の孫。交際を認めてもらうにはどうしたらよいか?彼らの仲違いの原因に隠された事実は?

■「想夫恋」
「あしながおじさん」の本がきっかけで仲良しになった琴の上手な華族の同級生が、英子が宛名を書いた手紙を残して失踪した。彼女はどこに?

■「玻璃の天」
資生堂パーラーで会った財界の寵児と風変わりな建築家。その建築家の建てたバベルの塔に似た家に招待された英子(とベッキーさん)は、転落事故に遭遇する。

銀座で本を買い、三越をぶらつき、資生堂パーラーでミートクロケットを食べる。
本好きのお嬢様の優雅な生活を描きながら、そのすぐ隣で戦争へと向かっていく日本という国への不安が重くたれ込めています。(その最たるものが、3編通して出てくる段倉という自由思想を目の敵にする男の存在です)
また与謝野晶子の有名な詩「君死にたまうことなかれ」について、弟の立場から考えたことはなかったです。確かに軍隊にいる弟にしてみれば迷惑、ですよね。
自分の主張を声を高く叫ぶことの大切さ。そしてそれがいかに危険なことかということが、繰り返し語られています。

ストーリーに重点を置いても良し、謎解きに重点を置いても良し、昭和初期の風俗や、文学の話題を楽しんでも良し。
とにかく1編1編の密度が濃かったです。



きみのためのバラ

きみのためのバラ

  • 作者: 池澤 夏樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/04
  • メディア: 単行本

青いバラが素敵な表紙です。
表題作からでしょうが、作中では青いバラではありませんでした。けれど青で正解だと思います。
どういう訳かこの作家の名を目にすると青と白が浮かびます。
名前が爽やかなせいか、作品の舞台が南の島が多いからなのか、よくわかりませんが、とにかくこの表紙は私がこの作家に持っているイメージにぴったりなのです。

日本、バリ、ブラジル、フィンランド、パリ、カナダ、メキシコ、世界中を舞台にした出会いと別れがテーマの8編の短編集になっています。

■「都市生活」
日本のどこかの空港近く、閉店間際のレストラン。たまたま席が近くになった男女の会話。
たとえひどい一日だったとしても、最後に美味しい食事と楽しく会話できる人がいればまだ大丈夫。そのとおりだなぁと思います。

■「レシタションのはじまり」
ブラジル奥地から疫病のごとく広まった「レシタション」。
唱えると争う気持ちがなくなるという不思議なもの。それが世界中に広まり、争いごとがなくなる、というお話。
現代のありえないおとぎ話。その起源がある殺人事件からという皮肉も。
人類が倫理的に一歩進化した、というような結びで終わっています。戦争がなくなるのは理想だけれど、その後の世界がどうなるか私の貧困な想像力では想像が困難。
争いごとがなくなった後の話も読んでみたい。
 
■「人生の広場」
ドイツ人の青年が人生の休暇を過ごしたパリ。 これといったことをせずにただ街を歩いて過ごす。人生の方向を決める前のささやかな時間。私にもあったのか?これから訪れるのか・・・。こんな風に好きな街で過ごしてみたいです。

ほかに、「レギャンの花嫁」(バリ)、「連夜」(沖縄)、「ヘルシンキ」(フィンランド)、「20マイル四方で唯一のコーヒー豆」(カナダ)、「君のためのバラ」(メキシコ)。
これでオセアニアとアフリカがあったら世界一周(?)なのに。
とにかく、旅する作家の面目躍如の作品集でした。


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ランランラン太郎

北村薫さんの本は「スキップ」を読んだことがあります。娘の好きな劇団「キャラメルボックス」でこの本を原作としたお芝居があるというので、観劇の前に読みました。とてもおもしろかったです。
ご紹介してある「瑠璃の天」もおもしろそうですね。
「きみのためのバラ」も読んでみたいです。
いつも読んでみたいなぁと思わせるshioriさんの書評には感謝しています。ようやく「ゴッホは欺く」上巻を読み始めました。(図書館で順番がようやく回ってきましたので)。とてもおもしろくて、下巻の予約を入れたのが遅かったのを悔やんでいます。
by ランランラン太郎 (2007-06-26 10:56) 

shiori

ランランラン太郎様
「スキップ」は私も大好きです。初めて読んだ北村さんの作品でした。以来大体の作品は読んでます。
キャラメルボックスは生では見たことがないのですが、シアターテレビジョンで流れているのを時々見たりします(上川さん目当てだったりしますが)。いつか生の舞台を見てみたい劇団の一つです。
「ゴッホは欺く」早く下巻の順番が来ると良いですね。良かったら感想を聞かせてくださいね(^^)
by shiori (2007-06-26 23:23) 

りゅう

お元気ですか?
shioriさんも忙しそうですね。私も。
私は来年1月1日始動の仕事に関わっているため
来年までバタバタしそうです。
ブログもなかなか書けない!
しかし、shioriさんに刺激され、本は読んでます。ありがとう!
きみのためのバラ 読んでみようと思います。
by りゅう (2007-06-28 00:52) 

shiori

りゅう様
お久しぶりです。
何とか元気でやってます(^_^;)
りゅうさんもお仕事忙しいのですね。
夏バテしないようにお互い頑張りましょうね。
本の感想もまたきかせてください。
by shiori (2007-07-30 01:30) 

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